進化心理学の立場からは「雌間競争」の活発化が性的アピールを高める事例は動物界でも観察されます。

たとえば、資源(巣の質や雄の持つ縄張りなど)が一部の雄に集中する種では、雌同士が身体的魅力や求愛行動を競う傾向がより顕著になることが報告されています。

もちろん、人間は高度な社会的・文化的要素を伴うため、動物行動のパラレルとして単純化過ぎる解釈は危険です。

人間の場合、宗教・法律・ジェンダー規範など多岐にわたる社会文化的要因が存在するため、動物行動学でみられる雌間競争に加えて「外部規範との調整」という要素が入ります。

たとえば、厳格な性道徳のある共同体では女性が露出度の高い服装をオンラインで公開すること自体が制裁の対象になりうるため、実際の振る舞いは一様ではありません。

しかし、動物にみられる雌間競争などの進化論的フレームワークは「なぜ女性が外見的魅力を競争に取り入れるのか」という問いへの有力な補助線となるのは間違いないでしょう。

まとめ:SNS時代の女性は「戦略的」に脱ぐ

SNS時代の女性は「戦略的」に脱ぐ
SNS時代の女性は「戦略的」に脱ぐ / Credit:Canva . 川勝康弘

戦略としての性

これまで女性の性的自己表現はメディアで頻繁に取り上げられ、その背景として「ジェンダー不平等」という言葉がしばしば使われてきました。

たとえば、男性優位の文化や差別構造が女性に性的なアピールを強いている、あるいは女性が内面化した抑圧を反映している、といった議論です。

しかしBlakeらの研究および関連文献からは、ジェンダー不平等だけでは説明しきれない複雑な実態が浮き彫りになりました。

ここで注目されるのが「所得不平等」という視点です。格差社会では、相対的地位や競争がより苛烈になる可能性があります。

男性は経済力で地位を示しやすい一方、女性は外見や魅力を“資本”として活用する場合があり、それがSNS上で顕著に表れる──この仮説は、単純な「女性の被抑圧」像だけでなく、「女性が能動的に競争を戦略化する」面も示唆しています。