ただし、女性による性的自己表現は必ずしも「男性を誘引する行動」に限られるわけではなく、女性同士の比較・対抗意識が重要な役割を果たすという視点もあります。
たとえば、SNS上でフォロワー数を競い合ったり、「誰が一番魅力的か」といった直接的・間接的比較が行われたりすることで、女性間競争がさらにエスカレートする可能性があります。
所得不平等における“勝ち組・負け組”の図式は、外見的アピールの分野にも投影されるというわけです。
したがって、所得不平等によって高まる競争環境のなかで、女性が自発的に「性的魅力」を“武器”や“資本”として活用しようとする心理的動機が強まることは十分に考えられます。
ここでのポイントは、外見重視の行動が常に「抑圧」だけでなく、「戦略的行動」として解釈される余地をもつということです。
次は戦略としての性的画像について「限られたお金持ちの存在を中心にまわる婚姻市場」や「SNS登場によって作られた無限の競争地獄」さらに「女性をめぐる文化的要因」など構造的な面からの話を進めていきたいと思います。
何が女性を脱がせているのか?:進化の観点から考える
経済学や社会学の研究では、所得分布の歪みが「婚姻市場」に与える影響がしばしば議論されます。
特に、高所得層の一部に資源や富が集中すると、「高所得男性」が相対的に少数派となり、婚姻市場において“希少な優良物件”のような存在になる可能性があります。
進化生物学的にみれば、魅力的なオス個体の希少性が高まると、雌同士の競争はさらに激しくなるのが一般的です。
人間社会でも同様に、高所得男性をめぐる女性間競争が強まることで、女性にとっては外見的魅力をアップすることが大きなメリットとして捉えられるようになるでしょう。
SNS上の性的自己表現は、その“宣伝効果”を期待して行われる一面をもち、実際にBlakeらの研究結果でも「高所得不平等 → 女性の性的画像の増加」という図式が確認されています。