次に、選挙運動ボランティアの原則、すなわち報酬支払の禁止と、SNS選挙との関係である。
もとより、選挙コンサルタントなどが、高額の報酬を得て、「当選請負人」のような業務を行うことが公選法の目的に照らし許されないのは当然だが、一方で、SNS運用が選挙で不可欠のツールになりつつある現実の下で、業務としてのサポートを厳格に禁止すれば、候補者自身或いは陣営のSNS活用のノウハウ・スキルの程度で選挙の当落が決まることにもなりかねない。それも公職選挙の在り方として望ましいとは言い難い。
これまで公職選挙法上、選挙運動に対する報酬支払が、車上運動員に対してしか認められていなかったこと、ポスター、チラシ制作等が公費で賄われていたことなど、現行の公選法の枠組みを、SNS運用が重要な手段となったネット選挙に適合するように見直していく必要があるのではなかろうか。
第一に、ポスター掲示板に紙の選挙ポスターを貼る、という従来の手法は、まさに「紙の時代」のやり方の典型である。しかも、選挙区が広く、有権者が多ければ多いほど、貼付のために膨大な労力を要し、そこに多額の「機械的労務費」も発生する。それが、選挙に金がかかる大きな要因になっていた。
さらに、最近では、「表現の自由」を逆手にとって、ポスター掲示板に、公序良俗に反するような画像のポスターを掲示するという問題も発生している。
それを、可能な限りネットによる方法に改めていくことで、「金のかからない選挙」にしていくことを考えるべきではなかろうか。
具体的には、公費によるネット上での立候補者の紹介及び情報提供のための場を大幅に拡充し、動画なども含めて提供できるようにする。ポスターの掲示板も、デジタルサイネージによる電子掲示板を街頭への設置に変更することを検討すべきである。それによって、ポスター制作についての公費負担の費用を削減することができる。