この両概念は人口減少、少子化、高齢化、小家族化など多くのテーマに応用できるであろう。ただし、英語辞典によると、flightはescapeとともにrun awayと同じ意味があるようなので、ここでは両者を互換的に使いたい注2)。

すべてが「人の選択」の結果

現今の「人口減少」だけではなく、これまでの地球規模での「人口増大」、さらに50年前に遡及すると「人口爆発」などの社会的減少などもすべてが「人の選択」(choices made by people)であった(エバースタット、2024:6)。

人類の歴史では戦争、革命、反革命、時の権力による「血の粛清」、大地震、気象異変、ペストや新型コロナなど感染症などによる「人口減少」が繰り返されてきたが、今回はそうではなく「生殖力の欠乏」(dearth of procreative power)だとエバースタットは断言する(同上:7)。

「生殖力の欠乏」の原因

これをもたらした直接の原因は、「子どもを産み育てるという欲求の世界規模での低下」(同上:7)である。

これもまた「人の選択」の結果であるとすると、先進国や一部の途上国を問わず、あるいはグローバルノース(GN)とグローバルサウス(GS)との違いを超えて、世界の4分の1で「生殖力の欠乏」が広がり、残りの世界もこの「人の選択」を後追いしつつある理由は何であろうか。

最大公約数的な「出生率低下」の原因群

これまでの世界の人口学界では、「出生率低下」とその結果としての「人口減少」の最大公約数的な理解として、近代化・産業化の成果としての医療知識の普及、医療機器の性能向上、医療環境の好転、医療制度の充実、薬剤の品質向上などの相乗作用による乳幼児死亡率の低下、新しい避妊法の普及、教育を受ける人々の増加と識字率の向上、女性の労働力参加と地位の向上などが挙げられてきた。

これらの要因は日本を含む先進国やGNという範疇に属する国々ではおおむね納得できるものばかりだが、世界的にはこの要因からは逸脱する国も多々あるために、依然としてこれらが世界的規模での「出生率低下」の主要因とは認められてはいない。

「人間の主体的意志の働き」(volition of agency)が原因