「今日はこんな服を着ている」

「私の作った料理を見て!」

「俺は日々はこんなに充実している!」

そして、その投稿に対して「いいね!」という反応が飛び交い、ベータたちはそれを大変喜んでいた。まるで「いいね」を集めること自体が目的であるかのよう。

「なぜこんなに、自分をアピールするのだろう?」

神様は首をかしげる。“承認欲求”という言葉は、いまだ神様の辞書にはない。

だが、明らかにベータたちがSNSで過剰な自己開示をし、他者からの反応を欲しがるという新たな行動パターンを見せ始めていた。

さらに、神様はベータたちのSNSを観察するうちに、さらなる事態に気づく。異常な攻撃性がSNS上で噴出していたのだ。

ベータたちはコミュニティ内で小さな事件やミスを見つけると、こぞってその相手を糾弾し、激しい言葉で批判する。

事実無根の噂や誹謗中傷が一瞬のうちに拡散され、さらなる怒りを呼び起こす。

その様子は森林を焼き尽くす「炎上」のようだった。

「あいつは最低の裏切り者だ。許していいのか?」

「こいつをみんなで追い詰めよう!」

当初、神様は「ベータたちの攻撃本能がSNSでも現れることはあるだろう」と予想していた。

狩猟採集の時代から続く彼らの激しい気質は簡単には変わらない。

だが、見ず知らずの相手にまで過剰な攻撃が繰り広げられるとは想定外だった。

「農耕でも法でもダメだった。SNSでもダメなのか……」

神様は落胆しながらも、なぜベータたちが自己開示と他者攻撃の両方に執着し始めたのかを探ろうとする。

攻撃本能が高いことは分かっていた。

彼らはもともと仲間殺しを繰り返していた種族だ。

しかし、その一方で「なぜSNSが承認欲求の塊を生み出すのか」は神様にとって謎だった。

自己開示と会ったこともない相手への攻撃は、いったいどこから来るのか……?

神様はベータの歴史を振り返り、その答えらしきものに思い至る。