当時の人々はバッタのせいで深刻な貧困に陥っていたのです。

人々の状況だけでなく、その後バッタがどのように死んだかなど、防除の手がかりを探そうとする記述も見られます。

もちろん蝗害は中国だけで起きていたわけではありません。旧約聖書の『出エジプト記』にも蝗害の様子が記述されています。

旧約聖書『出エジプト記』に見られる蝗害
旧約聖書『出エジプト記』に見られる蝗害 / Credit: Wikimedia Commons

また、地中海地域でもこうした蝗害が発生しており、オスマン帝国の時代、パレスチナで起きた蝗害の時には食糧危機が訪れ、成人男性に一人あたり20kgのバッタの卵を集めるよう命令が出されました。これ以上、バッタが増えないよう対策したのです。

ほかにも、アフガニスタンやイエメン、さらには北アメリカなど、地域に住むバッタが突然の大集団となって蝗害になっています。

中でも、2020年にアフリカを襲った蝗害は私たちの記憶に新しいところです。

アフリカ東部では非常事態宣言が出され、食糧危機が懸念されました。大集団となったバッタは各地へ広がり、ソマリアで大発生したバッタはケニアでは過去70年で最悪の規模となり、被害はエチオピア、ウガンダ、南スーダン、タンザニアにも及びました。

日本では明治時代に北海道で被害が出ています。入植地を襲うのはヒグマだけではありませんでした。バッタは人を襲わなくても集団で農作物を食い尽くし、食べるものがなくなって家々の障子紙まで齧ったと伝わります。

繁殖地で幼虫を駆除しても間に合わないほどの数のバッタが発生するというのは、ひとたび蝗害が起きれば飢饉になり、人々が貧困に陥ることなどから、どれほど恐ろしいことか想像がつくと思います。

空を飛べない幼虫のうちは大集団で地面を移動する
空を飛べない幼虫のうちは大集団で地面を移動する / Credit: Wikimedia Commons

ぼっち好きだったバッタがパリピに豹変する理由

では、元々おとなしくて単独で生きているバッタが、どうして突然大集団になって長距離を移動し、各地に被害を与えるようになるのでしょうか。