ここで排除された金大中(キム・デジュン)の平和民主党の存在から、韓国の政治は「独裁 VS 反独裁」から、「保守 VS リベラル」になります。
一方で、新党内でも、金泳三を支持する「上道洞系」(穏健保守)と、盧泰愚と金鍾泌のオルドライトの対立が表面化。1993年金泳三が大統領に当選し、党内の民正系(盧泰愚)及び共和系(金鐘泌)と、軍内のハナフェ(12.12クーデターを起こした軍内非公式組織)を粛清し、自由貿易を推進するなど、韓国の保守派はより自由主義的な変化を迎えます。
金泳三大統領は従来の保守系大統領の中では自由主義に近いのですが、現代保守派で彼を支持する人は少ないですね。民主党出身ですし、韓国保守主義の父である朴正煕大統領と厳しく対立していた人だからではないかと思います。
10. ニューライトの登場1997年のアジア通貨危機以降、ハンナラ党(民主自由党-新韓国党の後身)は金大中の民主党に政権を奪われ、保守派は再編を余儀なくされました。この中で現れたのが「ニューライト」(新右派)です。
ニューライトはアメリカ新保守主義の影響を受け、「経済的自由主義」「自由民主主義」「脱ナショナリズム」を掲げる一派です。「反日種族主義」の著者として有名な李栄薫教授がニューライトとして分類されます。
ニューライトの殆どは転向した旧マルクス主義者で、90年代にたくさん保守政党に入りました。
韓国で出版されているハイエクやミーゼスの著書はほぼニューライト系学者の翻訳書であるほど、自由主義を掲げています。しかし彼らの問題は、権威主義政権を称えているということです。朴正煕と李承晩大統領まで持ち上げ、韓国の国父として称えていますが、李承晩は経済的にも社会的にも全く自由主義ではありませんでした。
またニューライトは、財閥(独裁政権の支援で成長)や大企業の既得権を守るための介入に対しては何も言わない、ご都合主義の自由主義に近いので、注意が必要です。