2010年代に投資が爆発的に増大したことが「国進民退」を決定的にしたと考えるのは、この過程で次のようなメカニズムが働いたからだ。
「4兆元投資」と後に続く膨大なインフラ投資は、ほとんど全て国有企業に発注された(国有企業が利幅の厚い元請けになり、民間企業には利幅の薄い三次、四次の下請仕事しか回ってこない) 貸出バルブが全開になった銀行融資を受けられるのは国有企業に限られた(この当時、預金総残高の2/3を占めた四大国有銀行などは、民営企業を相手にしなかった) この時期に生じた不動産バブルによって、都市用地(利用権)を払い下げる地方政府の懐に莫大な収入が入った(不動産デベロッパーは、少し前まで民営企業が大活躍したセクターだったが、いちばん儲けたのは彼らでなく地方政府だ)
これによって、中国の富の配分は、圧倒的に「官」偏重になってしまった。次のグラフは経済全体の純資産のうち、政府が保有する割合を各国比較したものだが、中国は他国に比べて図抜けて政府のシェアが高いことが分かる。
上のグラフの対象は純資産だが、負債を考慮した総資産で見ると「官」への富(資産)集中はもっと顕著になる。
次のグラフは、もともとは「銀行借入は国有企業の特権である」ことを証明するために作られたもので、上場企業の総負債が極少数の超大型国有企業に集中していることを示しているが、負債が集中しているなら、資産の分布も同じだと考えて良いだろう。
このように富が「官」に集中したことによって、国有経済と民営経済の間には、圧倒的な規模と力の差が開いてしまった。2000年代には、国有企業に匹敵する存在感のある大手民間企業があったが、今日ではもともと私企業が強いIT関連のような例外を除けば、国有企業と民間企業の規模や力の格差は到底埋められないほど大きくなってしまった。中国共産党と中国政府は、この圧倒的な財力と法的な権限によって、経済に対して他の国では考えられないほど強い影響力を行使するようになった。