もちろん単純に教員の質の低下がわいせつ教員の増加の要因とは断定できないが、結果的にわいせつ教員が増加しているのは事実である。こうした現状を踏まえると、今後学校現場において以下のようなデススパイラルが生じる公算が大きい。
① 求職者が教員の厳しい労働環境を敬遠→② 教員採用試験の倍率低下→③ 教員の質の低下→④ 教員の不祥事増加→⑤ 世間の教員批判の高まり→⑥ 教員管理の厳格化(教員への要請・制約の増加)→⑦ 精神疾患等による教員の退職・休職者の増加→⑧ 教員不足により一人当たりの業務量が増加→⑨ 超過労働(サービス残業)時間が増加→(①に戻り再び繰り返す)
もしこのスパイラルが断ち切れなければ、それほど遠くないうちに全国いたるところで数・質とも慢性的な教員不足に陥り、日本の学校教育は崩壊してしまうだろう。
ところが文科省は教師の本質がよくわかっていないのか、効果の乏しい的外れな政策(教員調整手当額の引き上げ4%→10%など)を繰り返すばかりでとても期待できない。
この学校・教員の危機を乗り越えるためには、新たな法整備など抜本的な制度改革と教育予算の大幅増額が必要だが、残念ながら省庁内における文科省の影響力は極めて限定的である。それは日本政府が教育にかける予算割合の低さにも如実に表れており、世界全体順位では下から4分の1程度、先進国内では最低レベルなのである。
世界の公的教育費対GDP比率 国別ランキング・推移
また、いじめ防止対策推進法が2013年から施行されたにもかかわらず、これまでいじめ認知件数は概ね増加の一途をたどり、その抑止力が疑問視されている(施行初期はいじめの早期発見が認知件数増加につながった可能性を否定できないが、施行からすでに10年以上が経過している)。