この企業城下町を各地により大きな規模で現出させていくことこそが、次代に向けて必要な地域活性策である。主人公は、自治体から、民間企業や地域の担い手に移る必要がある。もしくは、官民連携形態に移行していくことが肝要である。

豊田市のトヨタ自動車、鳴門市の大塚製薬、日立市の日立製作所などは、企業城下町の代表的な事例ということになるが、そこまで巨大な企業でなくとも、例えば筆者が割と関わることの多かった新潟県などで見ても、三条市には、スノーピークやコロナ(暖房器具)といった企業の本社があり、長岡は元々ヨネックスの発祥の地で今も主力工場があり、柏崎にはブルボンの本社があり、と、実は各地には名だたる企業が多々ある。そして、誰もが知る“稼ぐ企業”がある町は安定感がある。

日本の企業は、地域と共に根差し、地域と共に成長してきている素晴らしい長寿企業が多いので、良し悪しはあるが、欧米のような短視眼的な経営ではなく、立派な経済人が地域全体の発展を意識して、地域の商工会議所の重鎮となるなどしている。即ち、企業や地域全体を考えたサステナブルな経営をしていることが多い。

私なりに勝手に、地域経営を意識しての深度で分類するならば、①事業や企業を存続させることで、地域の雇用を維持し、地域の発展のためにお祭りに協力するなどのレベル、②本業の事業を超えて、地域のスポーツチームの維持発展に務めたり、地域の公共事業を一部担ったりするレベル(市民が使える文化施設の建設や運営など)、③地域の経済人たちが、①や②のレベルを超えて、更にお金を出し合うなどして、町で起業がおこったり商店街が活性化したりするようなハード・ソフトの様々な仕掛けをしていくレベル、である。

②の典型例は、ホテルや美術館などを次々に作ったり運営したりしている福山の常石造船や今治の今治造船、鳴門市の大塚製薬、最近だと長崎に巨大なスタジアムを建設したジャパネットのようなケースであろう。