ここでは1つの空間を仕切りによって3つのスペースに分割し、真ん中に細い通路を開けておきます。

そして一番左のスペースからT字型の大きな荷物を一番右のスペースまで運搬するという課題です。

細い通路の間を抜けるには、T字型の荷物の角度を微妙に調節したり、回転させなければなりません。

皆さんもおそらく、ソファや大きな机を移動させる際に同じ課題をやった経験があると思います。

実験ではアリチームと人間チームにまったく同じ課題に挑戦してもらい、のちにその動きを分析して、どちらが効率的に荷物を運搬できたかを調べました。

すると面白い結果が出たのです。

集団が大きくなるほど、アリの効率性が高くなる

この実験では、アリと人間を3つずつのグループに分けました。

(ちなみに対象としたアリは世界中に分布する「ヒゲナガアメイロアリ(学名:Paratrechina longicornis)」です)

まず、アリは「1匹の単独アリ」「7匹の小グループ」「80匹の大グループ」の3つ。

人間は「1人の単独」「6〜9人の小グループ」「26人の大グループ」の3つです。

また可能な限りのタスクの公平を期すために、人間チームは会話やジェスチャーによるコミュニケーション有りの条件と無しの条件の両方で行われました。

タスク終了後、チームはコンピューターシミュレーションや様々な物理モデルを使って、両者の荷物を運び切るまでの効率の良さを比較しています。

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運搬の効率の良さを比較/ Credit: Ofer Feinerman et al., PNAS(2024)

その結果、事前に予測されていた通り、単独で荷物を運ぶ条件では、人間の方が戦略的にも効率的にも単独のアリより優れていました。

ところが集団の数が増えるにつれて状況は一転していきます。

人間チームは数が増えるにつれて荷物を運ぶ効率が下がっていき、特に話し言葉やジェスチャーでのコミュニケーションを禁じられて場合はその傾向が顕著になりました。