アリは集団行動のプロフェッショナルです。

彼らは驚くほどの統率性をもって、大きな獲物を巣に運び入れることができます。

一方で、仲間と協力する社会性の高さであれば、人間も負けてはいません。

そこでイスラエル・ワイツマン科学研究所(WIS)はこのほど、「アリvs人間」と称し、どちらが迷路の中で巨大な荷物をより効率的に運べるのかを検証しました。

その結果、集団が大きくなるほど、アリは人間よりも遥かに優れた協調性に達することが判明したのです。

迷路対決の詳しい内容を見てみましょう。

研究の詳細は2024年11月11日付で科学雑誌『PNAS』に掲載されています。

目次

  • アリvs人間!荷物をうまく運べるのはどっち?
  • 集団が大きくなるほど、アリの効率性が高くなる

アリvs人間!荷物をうまく運べるのはどっち?

アリはその高度な社会性と協調性により、地球上で最も繁栄している種の一つとなっています。

香港大学の研究では、地球上に生息するアリの総数は2京匹(1京は1兆の1万倍)に達するとの分析結果が示されました(PNAS, 2022)。

また炭素に換算した場合、アリの総重量は1200万トンになり、これは野生の哺乳類と鳥類の合計を超え、人類の約20%に相当する重さなのです。

それくらいアリは地球上で成功している種ですが、研究チームは今回、アリと人間ではどちらが集団行動の効率性に長けているのかを検証しようと考えました。

アリも人間も、自分たちより遥かに大きな荷物を仲間と協力して運搬できる数少ない生き物です。

特に少数で協力できる生物は他にいるものの、アリや人間のように大人数で協力できる生物は他にいません。

そこでチームは次のような迷路課題を用意しました。

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アリと人間に同じ迷路を用意/ Credit: WIS – Cooperation worked better for ants than for humans in a Weizmann Institute experiment(2024)