結論から言えば理論上は「YES」です。

理論的には塩の物質波、水の物質波、人間の物質波も存在し得ます
理論的には塩の物質波、水の物質波、人間の物質波も存在し得ます / Credit:Canva

量子力学的な現象が起ここるにあたり、物体のサイズも質量も完全な拒否権は持っていないません。

そのためもし、ある地点・ある瞬間に「物質」を波へと変換し(正確には「波として振る舞うように整えてやり」)その波を別の場所・別の時点で“粒”として再度現実化することも不可能ではありません。

量子力学では、粒子の状態は観測や測定によって決定される(波が収束する)と考えます。

つまり、波として広がりつつあった存在が、観測という行為をきっかけに「ここにある1つの粒子」に戻るのです。

このため理論的には「波として広がった物質」が、ある程度の条件(外界との相互作用がごく小さい、量子状態が維持できるなど)を満たしていれば、別の時点で「粒子」として観測されることがあります。

実際二重スリット実験も波として2本のスリットを通った粒子がその先の板に命中して粒子として出現しています。

ただし私たちのような巨視的(マクロ)な存在はあまりにも多くの原子や分子、そして周囲との相互作用を含んでおり、いわゆるデコヒーレンス(量子ゆらぎの消失)が起こりやすく、物質波に変換するのは理論的には可能でも極めて困難です。

さらに量子力学でいう物質波は質量が大きいほど短くなる性質があります。

1個の電子の波長は比較的長いのに対し、1個のNaCl分子やH2O分子、まして人間のような巨大な質量では、波長が極端に短くなり「波としての広がり」を実験で見るのはほぼ絶望的です。

ただどんなに困難でも「理論的に可能」という表現は抜け落ちません。

かつては巨大分子に量子的な性質がある可能性も「理論的にはありえるが実証は絶望的」と考えられていた時期がありました。

しかし技術の進歩により、私たちの大きな世界と量子の小さな世界の境は徐々に曖昧になりつつあります。

物質波の状態で飛んでいくときに光でちょっかいをかけたら、その後観測したときにどんな変化が起きてしまうのでしょうか?
物質波の状態で飛んでいくときに光でちょっかいをかけたら、その後観測したときにどんな変化が起きてしまうのでしょうか? / Credit:Canva . 川勝康弘