電子がネジネジしています。

ドイツのコンスタンツ大学(Uni Konstanz)で行われた研究により、単一の電子を螺旋状の物質波に作り替えることに成功しました。

電子はこの宇宙を構成する最も基本的な素粒子ですが、適切な制御を行えばその存在確率を螺旋状のコイルとして成形することができたのです。

さらに奇妙な事実として、この螺旋状の電子は計測機器にも見た目が渦として観測されるにもかかわらず「回転運動量がゼロ(角運動量がゼロ)」であることがわかりました。

螺旋状といういかにも回転していそうな形をとりながら、量子力学的にも古典物理学的にも「回転」の要素がないのです。

しかも興味深いことに、この状態になっても電子には質量と電荷が備わっており、電子の確率分布こそコイル状になっているものの、質量の中心(期待値)はコイルの中心を貫く直線上に存在することが示されました。

研究者たちは「このようなコイル電子が実験室だけでなく自然界にも存在する場合、宇宙論的な意味をもつ可能性がある」と述べています。

もしも自然界で左右にねじれたコイル電子の物質波が存在し、それが宇宙レベルの対称性の破れと関わっているのだとしたら、私たちがいまだ解き明かせていない物質と反物質の非対称性(なぜ物質がこれほど多く、反物質が少ないのか)や、パリティ破れ(左右対称ではない性質)の謎に迫れるかもしれません。

さらに、もし電子がコイル状の波動をつくり出しやすい環境が、ビッグバン直後の高温プラズマや極限的な宇宙空間にあったとしたら、そこでの電子の“ねじれ”がプラズマの伝播や乱流のふるまいを微妙に変化させ、大きなスケールでの構造形成(銀河が成長する過程など)に影響を与える可能性も想定されます。

「電子がねじれる」現象が宇宙進化の一端を左右しているとしたら、これほど壮大な話はありません。

しかし、そもそも研究者たちはどうやって1個の電子を螺旋状に変形させたのでしょうか?