それまで東京六大学野球連盟に属し多くのプロ選手を輩出した野球部や、故北島忠治監督が67年間もの長きにわたり指揮を執り「重戦車フォワード」を武器に一時代を築いたラグビー部の人気の陰に隠れがちだった明大サッカー部。栗田監督は日本有数の強豪に育て上げ、「サッカーの明治」とまで呼ばれるようになった。

その間も野放図に部員を増やすことを良しとせず、1学年15人程度に抑え、指導の目が部員一人ひとりに行き渡るような体制を維持し続けている。この点は、競技を問わず“人海戦術”で強化を図っている運動部の指導者にとっては、良いお手本となるだろう。

スポーツ推薦とはいえ、せっかく大学に入ったのだ。そしてサッカーを引退した後も、その人物の最終学歴として一生付いて回ることになる。その学歴にふさわしい人物に育て上げるという栗田監督の考え。一選手としてではなく、まずは一社会人として世の中に出ても恥ずかしくない人間にという意味では、学生スポーツの基本に立ち返るものだ。また、リーダーシップや協調性、コミュニケーション能力やストレスへの耐性など部活動で培った能力が、社会に出た後も活躍するにあたり、大いに役立つことを示しているのではないだろうか。