さらに205人のボランティアに協力を依頼し、参加者の顔写真を評価してもらったところ、感染者の顔は非感染者よりも有意に魅力的で健康的に見えると評価されました。

こちらは、参加者の顔写真を合成して平均値をとったもので、(a)が感染者、(b)が非感染者です。

※ それぞれ10名ずつの顔写真を合成しています。

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(a)が感染者、(b)が非感染者/Credit: Javier Borráz-León et al., PeerJ(2022)

これを見ると、男女ともに感染者の方が顔が小さくスッキリしている印象を受けます。

この結果についてチームは、トキソプラズマ感染が宿主の代謝率やホルモンレベルのような内分泌系を変化させることで、見た目を魅力的にしている可能性があると指摘しています。

そしてトキソプラズマ自体は、宿主が魅力的になり、他のヒトをより多く惹きつけることで、感染経路を拡大できるというわけです。

タマゴが先か、ニワトリが先か

とはいえ現時点では、この研究はサンプル数が少なく結果はすべて推測の域を出ないため、他の解釈も成り立つことをチームは認めています。

たとえば、「タマゴが先かニワトリが先か」みたいな話で、そもそも見た目が魅力的で、性的パートナーが多いから、その分トキソプラズマにも感染しやすいとも解釈可能です。

また別研究では、トキソプラズマに感染した男性は、非感染者にくらべ、男性ホルモンのテストステロン値が高いことを示唆するデータがあります。

しかしこれも、トキソプラズマが男性ホルモンの分泌を活発にしたというより、もともと男性ホルモンが多いから、寄生生物の感染率を高めるようなリスク行動を取りやすかったのだと捉えられるのです。

それから大前提として、トキソプラズマがヒト間で性感染するかどうかも、まだ完全には確かめられていません。

トキソプラズマは「人間を起業させる」!?

こうした疑問点を解決するためにも、チームは今後、より多くの被験者を対象にした研究を行う予定です。