ところが、チェコのプラハ・カレル大学(Charles University)は2014年の研究で、「男女間の性交渉がトキソプラズマの感性経路になりうる」ことを報告しています。

また同大は2020年にも、いくつかの動物種でオスからメスへのトキソプラズマの性感染が確認されたことを発表。

これを受けて、ヒト間でもトキソプラズマが性感染する可能性は十分にあることを指摘しました。

さらにトキソプラズマが宿主の性交渉に、勢力拡大の活路を見出していることを示すデータもあります。

トゥルク大学の生物学者で、本研究主任のハビエル・ボラズ=レオン(Javier Borráz-León)氏によると、ある研究で「トキソプラズマに感染したオスのラットは非感染のメスに対し、より強い性的魅力を持ち、パートナーに選ばれやすい」ことが判明したのです。

レオン氏は「これと同じ現象がヒトでも見られるかもしれない」と考え、調査を行いました。

感染者は「見た目」の魅力度が高く、性的パートナーも多かった

チームは、トキソプラズマの感染者35人(男性22人・女性13人)と、非感染者178人(男性86人・女性92人)を対象に調査しました。

参加者は全員(感染者を含めて)健康な大学生で、以前にトキソプラズマ感染を調べる別研究で血液検査を受けています。

ここでは参加者の健康状態や身体測定、外見の評価などを行った結果、驚くべきことに、トキソプラズマ感染者は非感染者に比べて、顔の「左右対称性のゆらぎ(Fluctuating Asymmetry: FA)」が有意に低いことが判明したのです。

FAは、身体の左右対称性のずれを測る指標であり、FAが低い(つまり、対称性が高い)と、身体の健康状態や外見的な魅力の高さに関連することがわかっています。

また女性の感染者は、非感染の女性に比べて、BMI(ボディマス指数)が低く、自分の魅力度を高く評価し、性的パートナーの数も多いことがわかったのです。