少々、清水側からの目線が入ってしまうが、宇野のような好選手を放出し、ベンチを温めることが多かった白崎を獲得する町田の補強戦略に疑問を感じたファンは多かったはず。しかし黒田監督は白崎を8月7日の第25節セレッソ大阪戦で途中出場させた後、8月11日の第26節湘南戦からは最終節まで先発起用。白崎もその期待に違わぬ働きを見せ、ボランチとして中盤の底を締めるだけではなく、1得点1アシストを記録。見事なまでに再生した。結果論ではあるが、町田にとっても清水にとっても「ウィンウィン」のトレードだった。

しかし、中山は加入して4試合目の第30節アビスパ福岡戦で負傷して長期欠場を強いられ、相馬も2列目起用によって、その卓越した得点力を生かし切ったとは言えなかった。

その間、大卒ルーキーの右サイドバックDF望月ヘンリー海輝が台頭し、日本代表にまで選ばれるほどに成長したが、下降気味だったチームの雰囲気を一変させる役割を任せるには、あまりにも酷だった。


藤田晋氏 写真:Getty Images

さらなる補強で“シーズン2”に期待

町田の社長である藤田晋氏は、ABEMAで配信中の『ZELVIA 異端の新参者』で、「(この夏に)来年分の補強もしたつもり」という趣旨の発言をしている。この選手層では、ACLも戦う来季を乗り切るのは、いくらやり繰り上手でシーズン終盤には3バックにフォーメーションを変更しチームを立て直した黒田監督でも難しいミッションとなるだろう。

その黒田監督もシーズンが進むにつれ、優勝へのプレッシャーやピッチ外での騒ぎが要因と思われる睡眠障害に陥り、導入剤を服用していたと同番組で告白している。おそらく監督のみならず、選手も試合と並行して、そうした重圧と闘っていたと思われる。その中での3位フィニッシュには、賛辞を贈りたい。

来シーズンは、福岡の監督に就任した金明輝前ヘッドコーチに代わり、有馬賢二氏がヘッドコーチに就任する町田。有馬氏はJ3のY.S.C.C.横浜(2014-2015)、U-15/17日本代表(2017-2018)、当時J2のファジアーノ岡山(2019-2021)で監督を歴任したが、通常、特に日本人監督の場合、監督経験のあるヘッドコーチを招聘することを敬遠する指揮官が多い。“代わり”が横にいることで、成績次第ですぐにでもクビにされる体制が整ってしまうからだ。