研究ではこの2つの量子もつれの状態が調べられ、実際に「振動するシステムのエネルギー状態」と「時計のスピンの向き」の関係が期待通りに対応しているかをチェックされました。
その結果、ある条件下では、振動が続けば続くほどスピン向きが時間の経過に合わせて変化し、まるで時計が時刻を刻むように機能することが確かめられました。
(※特に磁気時計のエネルギースケールが十分大きい場合に、磁気時計が時間を古典的に記述できるようになる)
さらに興味深いことに、磁気時計の量子状態を部分的に観測(射影)することで、振動する調和振動子の進化を記述する「方程式」を導き出せることがわかりました。
しかも、その方程式はシュレーディンガー方程式の形式を持ちながら、外部の時間パラメータの代わりに、磁気時計の量子状態が「時間」として機能しているのです。
つまり、シュレーディンガー方程式の時間パラメータを、時計系の自由度(量子状態)に依存する形で「再解釈」することができたのです。
より簡易な言い方をすれば「シュレーディンガー方程式の時間要素の代わりに量子状態を当てはめることができた」とも言えます。
驚くのは、こうしたアプローチによっても、シュレーディンガー方程式の構造自体はほとんどそのまま保たれる点です。
通常なら外部から押し付けられるはずの「時間(t)」が、今度はシステム内部の量子もつれによって自然に定義されるわけで、私たちが当たり前だと思っていた「時間」が、じつは量子相関から浮かび上がる「指標」に過ぎないという、新しい見方を示唆しているのです。
この結果は、従来は「外部から与えられる」と思われていた時間を、量子状態そのものが生み出すことを意味します。
このことから研究者たちは「時間は量子もつれの副産物である」と結論しています。