時間は真なのか、それとも偽なのか?
イタリアのフィレンツェ大学(UNIFI)で行われた研究により、時間を否定するもう1つのシュレーディンガー方程式が発見され、時間は「量子もつれ」現象がうみだす副産物のような存在であることが示されました。
研究者たちは「私たちが時間の経過を知覚するということは、物理世界に何らかの「もつれ」が織り込まれていることかもしれません」と述べています。
私たちにとって当たり前の存在である「時間」。
新たな発見は既存の時間の概念を大きく揺るがすものになるでしょう。
そこで今回はまず研究のベースになった「Paw機構」について解説しつつ、次ページで研究内容の紹介を行いたいと思います。
研究内容の詳細は『Physical Review A』にて掲載されました。
目次
- 時間は存在するのか?
- 時間を否定するもう1つのシュレーディンガー方程式
時間は存在するのか?
時間とは、私たちの日常や科学の礎を支える、きわめて基本的な概念の一つです。
時計の針が刻む秒や、昼から夜へと移り変わる一日の流れは、時間が絶対的に存在すると信じさせるに十分でしょう。
しかし20世紀以降、物理学の飛躍的な発展によって「時間は本当に普遍なのか?」という根本的な疑問が浮かび上がってきました。
もしかすると、時間はある特定の条件下で姿を現す“派生的”な性質なのではないか、というのです。
アインシュタインの一般相対性理論では、時間は空間とともに「時空」を形づくり、重力の影響で歪んだり遅れたりします。
私たちが当たり前だと思っていた「絶対の時間」は、観測者の場所や状態によって変わる相対的な存在であることが示されたのです。
たとえば、強い重力場に近いほど時計はゆっくり進み、重力の弱い場所ではわずかに速く進むことが予測されます。
実際、東京大学と理化学研究所の研究チームは、超高精度の可搬型光格子時計を東京スカイツリーの地上階と展望台に設置し、約450メートルの高度差でも1日あたり4ナノ秒ほどの進み方の違いが測定できることを示しました。