まさに、わずかな高さの違いさえ時間に影響を与える証拠といえます。
一方で、量子力学では時間の概念は大きく異なります。
量子重力では、宇宙全体をひとつの量子状態で表すことを想定しますが、たとえばホイーラー・デウィット方程式などを解くと、宇宙は「時間に依存しない」定常状態であるかのように見えてしまうのです。
イメージとして、宇宙全体が「巨大な1枚の写真」に収まっているようなもので、そこには動きも変化も時間の流れも見当たりません。
しかし、私たちは日常的な経験から「時間が流れ、物事が進化し、変化が起こる」と感じます。
たとえば、朝起きて、昼食をとり、夕暮れを迎え、夜眠りにつく――こうした「変化」を当然のものとして受け止めています。
では、なぜ「全体」から見ると静止しているはずの宇宙で「中にいる私たち」の視点からは「流れる時間」や「進行する出来事」が見えるのでしょうか。
この「宇宙全体は時間無依存なのに、内部の観察者には変化が知覚される」という矛盾のような現象を「時間の問題」と呼びます。
ページ=ウッターズ(PaW)機構は、この相対性理論と量子力学の間に存在する「時間の問題」を解決する一つの考え方です。
たとえば、普通に考えれば、宇宙全体が「静止した写真」だとしたら、その中にははじめから終わりまで、すべての出来事が1枚の画面に収まっていて、「過去から未来へと進む時間」など存在しないように見えます。
しかし、PaW機構は、「宇宙」という巨大な写真の中に、ある種の「時計」役を果たす部分を組み込み、その「時計」が示す位置を基準に、私たちが「今」を選び出すという仕組みを考えます。
この考え方によれば、私たちは「時計」がどんな時刻を指しているかを基準にして、宇宙全体の中から「今」に対応する部分を切り出すことができます。
これによって、ほかのすべての出来事が、あたかも「時計の針の進み」に合わせて変化していくように見えるのです。