さらにこの研究では、色の多様性を示す「シャノンエントロピー」という物理学的な指標も併用し、画像の鮮明さと情報量を同時に分析できるようにしました。
つまり画像の鮮明さ(構造的安定性)を、物理学でよく使われる「エネルギー」や「エントロピー」と類似した概念で表現しているのです。
具体的には、画像のピクセルをランダムに入れ替える過程を「構造のエネルギーを増加させる操作」として捉えています。
物理学では、システムの安定性や変化をエネルギーの観点から解析することが一般的です。
今回の研究では、画像のぼかしを「物理的な構造が壊れていくプロセス」に見立て、エネルギーの変化を数値的に測定しています。
絵師の作成した絵画に物理学的なエントロピーとエネルギーの概念まで持ち込み、その分析から新発見に辿り着いた著者の熱意には驚くばかりです。
ちなみに、研究の題材に選ばれたのは、さくらみこ氏を描いた画像であり、今回の手法により、さくらみこ氏の画像の鮮明さを客観的に示すことが可能なりました。
これは35Pたちにとって嬉しいことでしょう。
チャン氏は、今回の研究が始まったきっかけを振り返り、「『押し事』への情熱を『お仕事』に注いだ結果、今回の論文が生まれました」と述べています。
(※推しへの熱意が学術的発見につながった貴重な例ともなるでしょう)
彼が開発した手法は、視覚的な特性を客観的かつ数値的に評価するための新たな可能性を開きます。
将来的には、映画やアニメの解析、デザインの最適化、AI生成画像の解析に至るまで、様々な分野の芸術作品を評価し、品質を向上させることに役立つかもしれません。