「『鮮明さ』をぼかしに対する抵抗力と定義しました。
絵師たちが、作品がどれだけはっきり見えるかを評価するために、キャンパスをズームアウトして全体像を確認する技法から着想を得ました。
数学的には、鮮明度は色のコントラストやその空間的分布で表現できます」
チャン氏が鮮明さを定量化するために用いた手法とは、「元の画像」と、「意図的にぼかした画像」を比較することで、元の画像がどれだけ鮮明だったかを測るというものです。
具体的には、用意された元の画像において、隣り合うピクセル(デジタル画像の最小単位)をランダムに入れ替えることで、その画像を段階的にぼかしていきます。
そしてそれらぼかした画像と、元の画像を比較し、「どれだけの情報量が失われたか」調べます。
実際、元の画像が鮮明であればあるほど、その画像をぼかすと、元の画像とは大きく異なる作品になります。
つまり劣化が大きくなるのです。
一方で、元の画像があまり鮮明でない場合、その画像をぼかしたところで、元の画像との差はそこまで生じません。
元々持っていた情報量が少ないため、劣化も小さいのです
身近な例で考えてみましょう。
例えば、鮮明な絵(細かい模様や線がたくさんある)を消しゴムでこすると、絵はかなり変わります。
一方、最初からぼやけた絵(ふんわりとした色だけの絵)をこすっても、たいして変化はありません。
つまりこの研究では、意図的なぼかし操作で「変化が大きければ鮮明」と定義することで、鮮明さを数値化することに成功したのです。