その他、陸上競技場を併設するスタジアムのほとんどが、国体のために建設されたものであり、“負の遺産”とさせないため、自治体側に半ば押し付けられたのが現実だろう。
東日本での建設を妨げるものは
ではなぜ、東日本にサッカー専用スタジアムが新設されないのか。東日本との比較で言うと、西日本は各Jクラブが「地域密着」の経営を進める中で地元自治体や企業と連携し、新スタジアム建設の機運が高まりやすい傾向がある。
また、新スタジアム建設には莫大な建設費がかかるため、スポンサー企業の後押しが欠かせない。特に地方経済の拠点としての役割がある都市は、インフラ投資としてスタジアム建設を選ぶ傾向にあり、理解が得られやすい側面もある。
加えて西日本では、比較的、用地確保がしやすい点もある。首都圏をはじめ東日本の都市部は地価が高く、建設用地の確保で壁にぶつかる。特に東京では資材費の高騰に加え人件費も上がり、当初の想定費用を大きく超える。五反田TOCビルや中野サンプラザの建て替えもままならず、TOCビルに関しては建て替えを諦め営業再開に至ったほどだ。たった1棟のビルすら建てられないのが、今の東京の現実だ。
さらに、これらを押し切って建設計画を前進させようとしても、待ったを掛ける壁が存在する。行政監視のために存在する「オンブズマン」と呼ばれる市民グループだ。
「公的オンブズマン制度」は、行政側の業務や職員の行為などによって不利益を受けた時に苦情を申し立てることができる制度で、弁護士免許を持ったオンブズマンが公正・中立的な立場でその任にあたる制度だが、厄介なのは、公的オンブズマン制度の外にある「市民オンブズマン」や「私的オンブズマン」と呼ばれるグループだ。
こうした「オンブズマン」を名乗る市民団体が首都圏を中心に次々と誕生し、その数が把握できないほどに膨れ上がっている。「市民オンブズマン」に特別な権限はないが、彼らは市民の権利を最大限に活用し「行政を市民の手に取り戻す」という旗印の下、税金の使い道に目を光らせ、「無駄」と決め付けたものに対しては徹底的に潰しに掛かる。