このうち、FC東京と東京Vの本拠地である「味の素スタジアム」は、2013年に開催された国民体育大会(国体)のために建設されたものであり、横浜FMの本拠地「日産スタジアム」は2002年FIFAワールドカップ日韓大会の決勝戦が行われる予定だったにも関わらず、1998年の国体を念頭に設計されたため、陸上トラックが併設された経緯がある。
ちなみに陸上トラック付きのスタジアムでサッカーのW杯決勝戦が行われたのは、日産スタジアム以外では、1938年フランス大会のパリ「スタッド・オリンピック・ド・コロンブ(現在は全面改修され2024年パリ五輪のホッケー会場として使用)」と、1974年西ドイツ大会のミュンヘン「オリンピア・シュタディオン」、1990年イタリア大会のローマ「スタディオ・オリンピコ」、2006年ドイツ大会のベルリン「オリンピア・シュタディオン」のみだ。
このうち「味の素スタジアム」は2017年、日本陸連第1種公認が満了となって以来、陸上競技の公認競技大会が開催されることなく、広大かつ無駄なスペースが残されたままだ。2019年にはラグビーワールドカップの会場となったが、2021年の東京五輪後に球技専用スタジアムに改修する構想が持ち上がったものの、議論が進んでいる様子は伺えない。
「日産スタジアム」は、かつて「スーパー陸上」と呼ばれたゴールデングランプリ陸上が開催され、味スタ同様、ラグビーW杯の決勝戦会場となった。しかし現在では陸上のイメージがない上、球技と陸上の間を取ったような設計のためピッチとスタンドの距離が遠く、スタンドの傾斜も緩いことで、旧称の横浜国際総合競技場からもじって「横酷」と呼ばれるほどだ。
川崎の本拠地「等々力陸上競技場(Uvanceとどろきスタジアム by Fujitsu)」も、その竣工は1962年。Jリーグ創設の1993年から2000年の味スタ移転までヴェルディ川崎が本拠地とし、1999年からは川崎フロンターレが本拠地としているのだが、その歴史は半世紀を超えている。観客席は増築に次ぐ増築で現在約27,000人の収容人数を誇るが、2015年に新築されたメインスタンドは立派である反面、バックスタンド1階席のコンコースの狭さや2階席への階段、トイレの少なさに“継ぎはぎ感”を感じるスタジアムだ。2024年になって収容人数約35,000人の球技専用スタジアムへの改修計画が浮上したが、まだ骨子案の段階であり、メインスタンド新築から間もないこともあって、時間がかかりそうだ。