4. 丸呑みされたい男

 カナダ・トロントの精神病院のドクターからは、自分が巨大な何者かに食べられたいという欲望を持つステファンという名前の45歳の男性のケースが報告されている。いったいどういうことなのか?

 このステファン氏の話をよく聞いてみると、食べられるといっても切り刻まれたり、口の中で噛み砕かれたりするのは御免で、ひと口に丸呑みにされたいということらしい。具体的にはそびえ立つほど大きな女性に丸呑みにされ、胃腸の中を通り抜けて便と一緒に排泄されたいという、なかなかアブない願望である。ちなみにステファン氏には精神疾患を疑わせる要素はない。

 研究者によればこのステファン氏の願望は、生まれる前の状態に戻りたいという欲望が根底にあり、まさに母の子宮へ帰りたいという願いなのではないかと説明している。

 ほかにもステファン氏は糞便や精液になる妄想を膨らますこともよくあるという。こうした存在になってその当人の身体から出てきたいのだという。

 ステファン氏が精神病院を訪れたのは、自分はひょっとしてゲイではないかと憂慮してのことだったというが、ドクターはそれには当たらないと診断している。

 フェティシズムのひとつに生きたまま丸呑みされてしまうシチュエーションを好む「丸呑みフェティシズム(Vorarephilia)」というものがあるが、おそらくステファン氏の願望に関係しているだろう。