これまでの精神医学の歴史の中でも結論が出ていない、なんとも不可解な症例がある。オンラインメディア「Big Think」の記事では、今もなお謎に包まれたままの奇妙な5つの症例を紹介している。いずれも人間存在の複雑さを物語るミステリーだ。
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1. アヴェロンの野生児
1800年に南フランス・アヴェロンの森で発見された少年が“アヴェロンの野生児”だ。保護時には11、2歳であったといわれている。
文明から切り離された生活を送っていたためか、言葉を話すことも理解することもできずまさに“野蛮人”であった。
医師のジャン・マーク・ガスパール・イタール氏は少年を引き取り、ヴィクトールという名前を与え熱心に教育を行った。人格は遺伝で形成されるのか、それとも環境が決めるのかという「遺伝環境論争」の格好の研究素材としてヴィクトールは学会の注目を集めることになった。
教育の成果はなかなか得られなかったが、服を着ることとトイレで用を足す習慣は早いうちに身についたという。しかしこの5年間の教育の甲斐も虚しく、結局のところ、簡単な文字はいくつか書けるようになったものの、言葉を流暢に話すことはできなかったという。
臨床精神科医で自閉症の専門家であるウタ・フリス氏はヴィクトールが自閉症児であった可能性を指摘している。