3. ドラゴンばかりが見える女
医学誌「The Lancet」で2014年に発表された研究では、変形視(metamorphopsia)の一種である「Prosopometamorphopsia」の症状が紹介されている。これを強引に訳せば「顔面変形視」ということになるが、この症状を持つ52歳のオランダ人女性は、人の顔を見ると必ずドラゴンの頭に変貌を遂げることを訴えていたのだ。
“変身”では顔色が黒ずみ、顔全体が長くなり、耳は尖り、鼻が突き出て、爬虫類の皮膚に変わり、巨大な目が黄色や緑や青、あるいは赤に輝くのだという。
そしてさらに厄介なのは、人の顔がなくともほとんどすべての物に“ドラゴン”の幻覚が現れ、壁や電気のコンセント、パソコンのディズプレイをはじめ、何もみえないはずの暗闇の中からでさえドラゴンの姿が浮き上がってくるということだ。
専門家たちはこの女性に対してさまざまな検査を試みたが、ドラゴンが見えるメカニズムはいまだに謎のままである。