可能性は日テレかフジ

 では、どの局が1社独占放送をする可能性が高いのか。筆者の見立てでは、日本テレビかフジテレビに可能性がある。地上波・BS・CSと多様な放送波を持ち、huluやFODなどのネットインフラを自前で保有しているからである。

 例えば地上波では、開催期間中は五輪一色にすれば勝機が高まる。毎日ハイライトや見どころ紹介を夕方と深い時間に放送し、視聴率のとれる人気競技の生中継をする。翌日午前や午後のワイドショーでも独占放送し、高視聴率を終日・連日にわたり続けられる。2週間ほどで普段より格段に高いGRPを実現できるだろう。

 ただし地上波の広告収入だけで放映権料のすべてを賄うのは難しい。BSでの広告収入やCSでの新規加入者からの収入などで最大化を図らなければならない。さらにHuluやFODなどで日本人以外の試合も含めて全試合をストリーミングとVODで見られるようにすれば、加入者が増え広告料や有料収入を上げられる。しかもCSや有料サイトは、一度加入者が増えればその後の工夫次第で収入増は続く。

 さらに「ヒトIP」という発想もある。すでに音楽の分野では人気アーティストの権利料や出演料などで収入増を果たしている局もある。しかも五輪は大量のタレントを輩出する最高の場だ。放映権を独占した局は、ここでも大きなアドバンテージを得られる。五輪開催期間が終わっても、新たな収入増の道を創れるのである。

 以上のように五輪はハイリスクだがハイリターンだ。うまくマネージできれば、米国NBCのようにビジネスは大きく成長するし、メディア事業の進化も果たせる。問題はテレビ局の経営体制だ。サラリーマン社長にその気概・勇気・実行力があるか否かだ。多様なインフラを視野に入れたトータルデザイン力があれば、ユニークなメディアを誕生させることにつながる。その可能性は決して小さくないが、大きな賭けであることは間違いない。

 やがて破綻するか、縮小均衡する道をたどるJC。この枠組みの中でずるずる落ちるに任せ、画期的な道に踏み出せないテレビ界の末路だけは勘弁してほしい。

(協力=鈴木祐司/次世代メディア研究所代表)

提供元・Business Journal

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