民放5局は軒並み赤字
まず問題は、五輪中継は民放にとってお荷物になり始めている点だ。2018~24年の五輪4大会の放送権料は1100億円。夏季大会が東京とパリ、冬季が平昌と北京だ。12年のロンドン以降、リオ、東京と夏季3大会は、民放全体の収支は赤字だった。時差も円安も関係なく日本人選手が活躍した東京大会ですら赤字だったので、良い時間の中継が少なく、円安で制作コストが上がった今回は赤字は避けられない。
五輪の放送は毎回NHKの圧勝だ。冒頭のグラフはビデオリサーチが調べるパリ五輪関連番組の関東地区の視聴率データから作成したもの。横軸はL字帯(GP帯や土日昼間)の平均個人視聴率、縦軸は春クールの各局プライム帯の平均視聴率比での上昇分。そして円の大きさは、期間中に放送された番組のGRP(Gross Rating Point:一定期間に放送されたテレビCMの視聴率の合計)に比例する。
上昇率(グラフ縦軸)が最も高いのはテレビ東京。バレーボールや柔道など注目種目を中継した7月28日の2時間あまりの個人視聴率は7.7%となった。普段の数字が低い同局にとって、上昇分は5%強と最も大きい。ただし中継できたのはこの1枠のみ。GRPは極端に少ない。
フジテレビも悲惨だった。中継の対象はNHKと民放各局による「くじ引き」で決まる。運に見放されたフジテレビは、女子バレーの日本×ケニア戦などしかなく、2時間足らずの中継の個人視聴率は5.4%、普段と比べて2.1%高い程度に終わってしまった。同局は2002年のサッカーW杯で日本×ロシアという最高の中継を当時の亀山千広編成制作局長が引き当て、「神の手」ならぬ「亀の手」ともてはやされた幸運もあった。ところが今回は最悪のくじ運に沈んだのである。