なお、判決文を読む限り、配置転換命令の理由にタクシーチケットの不正利用の主張をしたことが含まれていたということは書かれていないために判然としません。控訴人から「公益通報をしたから配置転換は不利益取り扱いで無効だ」という主張を控訴審になって突然行ってきたようです。

通報が「公益通報」に該当するか判断できる程度に、その後の調査や是正等が実施できる程度に具体的な事実を知らせる必要

公益通報者保護法2条の「通報」となるには「一定の事実の通知があれば足りる」と解説されます。しかし…

【公益通報ハンドブック】にある公益通報ガイドラインでは、「通報が「公益通報」に該当するか否か判断できる程度に、またその後の調査や是正等が実施できる程度に具体的な事実を知らせる必要がある」と書かれています。

消費者庁の逐条解説でも「事業者名、通報対象事実と疑われる行為の内容、当該行為の実行者名などの具体的事実を示して行われる場合には、「通報」に当たり得ると考えられ」とあるように、「具体的事実」が必ず求められます。

そうでなければ2条の「通報」要件を充たさず、そもそも「公益通報」ではないため、3条や6条の不利益取り扱いを無効にする効果は発生しませんし、その効果を発生させるための外部通報の場合の「真実相当性」の話にもなりません。

「記述されている内容がある程度真実か否か」は、公益通報者保護法の外の話として論じられるにとどまり、法的な話とは別次元です。

兵庫県知事問題に見るマスメディアや斎藤知事の支持者不支持者を問わず、この辺りが無視され誤解された主張が席巻しているのが現状で、【法律の条文から理解する】という作法が求められます。

斎藤知事 同知事SNSより

編集部より:この記事は、Nathan(ねーさん)氏のブログ「事実を整える」 2024年12月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「事実を整える」をご覧ください。