これはFAX送信者を特定して問い詰めてFAX送信をも解雇通知の理由にしていたものですが、権利濫用の主張も退けられています。当然、「公益通報」ではないので、「探索禁止」という話にはなり得ません。

東京高等裁判所平成29年6月7日判決 平成29年(ネ)第168号

東京高等裁判所平成29年6月7日判決 平成29年(ネ)第168号

第3 当裁判所の判断

~省略~

5 控訴人の当審における補充的主張について

前記認定のとおり、控訴人が、G監事及びM監事に対し、平成24年9月24日付けの「ご相談事項」と題する書面を郵送し、同年10月11日、G監事と面談した際、I常務理事とJのタクシーチケットの不正使用の件に関する調査、JとLの東日本大震災時の暴行、器物損壊の件についてのさらなる処分を求めたことが認められるが、これらは、控訴人からの情報提供にとどまり、公益通報者保護法にいうところの公益通報にも公益通報者にも当たらない。

よって、上記理由をもって、本件配転命令が権利濫用に該当する余地はない。

タクシーチケットの件は業務上横領罪だとして検察に刑事告発もされますが、嫌疑不十分での不起訴処分となっています。暴行については社内で処分を受けたがその1年後に昇格している、といった事情が書かれています。

また、G監事が、控訴人による常務らの経費の無駄使いの指摘を受けて、総務部長に経費使用データを作成し報告させ、その結果、「会合時間の長さ(結果的にタクシー使用の回数増加)が目立つ者もおり、健康管理の観点からも是正する必要があったなどと指摘した。そして被控訴人においては、同年度上記幹事監査において、当会幹事より、会議費・交際費・旅費交通費の使途が適切であるか否かの指摘、調査要請があり、調査検討を行い、会議・交際費にかかる規定及び旅費交通費にかかる規定を改正することなどを通知した。」という展開があったことが判決文に記述されています。

業務改善に繋がる申し出であったとしても、それが「公益通報」としての「通報」要件を充たすのか否かは、全く別問題だということが分かります。