さらにそれだけではありません。

米ノースウェスタン大学(NU)による2022年の研究で、コナン細菌を乾燥させて冷凍した場合(※)、人間の致死量の2万8000倍に相当する14万グレイの放射線量に耐えられるようになったのです(Astrobiology, 2022)。

(※ 放射線は細胞内の水分子に作用して、活性酸素を発生させます。乾燥させて冷凍すると、細胞内の水分子が極めて少なくなるので、活性酸素が著しく低下し、それだけ放射線耐性も高まります)

これはあらゆる生命体の中でも、異例の放射線耐性の高さでした。

これを受けて、コナン細菌は「世界で最も放射線に強い生物」としてギネス記録に認定されています(Guiness World Records)。

しかし最も気になるのは「なぜコナン細菌はこれほど強い放射線耐性を持つのか」ということでしょう。

この謎については、先と同じノースウェスタン大学の最新研究によって解明されました。

放射線に強いメカニズムを解明!ヒトの役にも立つ

これまで、コナン細菌の放射線耐性は主に「DNAの修復能力が異常に高いからだ」と考えられてきました。

放射線にDNAを傷つけられても、直ちに回復できることが鍵だと見られていたのです。

もちろんDNA修復能力の高さも重要ですが、ノースウェスタン大学の最新研究ではむしろ、DNAが傷つけられる以前に、活性酸素からDNAやタンパク質を守る防御システムが強靭であったことが明らかになりました(Press release, 2024)。

同チームはコナン細菌の放射線耐性の秘密を解き明かすべく、分子レベルで調査を実施。

するとコナン細菌は活性酸素を一掃できる強力な抗酸化物質を生成できることが判明したのです。

さらに深掘りしてみると、この抗酸化物質は「マンガンイオン」「リン酸塩」「ペプチド」の3つの成分が強固に結合してできていることがわかりました。

画像
コナン細菌/ Credit: NU – How ‘Conan the Bacterium’ withstands extreme radiation(2024)