今度は太陽系から約4.3光年の場所にあり、最も近い恒星とされる「ケンタウルス座アルファ星」にしましょう。

速度もさらに速めて、光速の99.99%のスピードで地球とケンタウルス座アルファ星を往復してみます。

すると、地球にいる人からは約8年と8カ月が経過していましたが、亜光速で旅行した人にとっては約1カ月半しか経っていませんでした。

つまり、旅行者が1カ月ちょっと旅している間に、地球の人々は8歳も年をとっていたのです。

これが光速に近いスピードで移動すると体験できる現象、「時間の遅れ」となります。

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亜光速で旅すると、時間の進みが遅くなる?/ Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部

また変わるのは時間だけではありません。

移動スピードが光速に近づくにつれて、景色も変わってきます。

特に大きく変わるのは光の色の見え方であり、前方の光ほど「青色」に見え、後方の光ほど「赤色」に見え始めるのです。

これは光のドップラー効果によります。

ドップラー効果は、音源が移動するにつれて周波数が変わる現象のことで、救急車のサイレンがよく例えに使われるアレです。

サイレンが近づいてくると音の波長が縮まって高い音に聞こえ、サイレンが遠ざかると音の波長が伸びて低い音に聞こえます。

同じことは光でも起きているのです。

亜光速で移動する人にとっては光が前方からどんどん近づいてくるので、波長が短くなって「青方偏移」を起こし、青っぽく見え始めます。

反対に、後方の光はどんどん遠ざかるので、波長が長くなって「赤方偏移」を起こし、赤っぽく見え始めます。

なので亜光速で宇宙空間を飛んでいると、前を向けば青い景色が、後ろを向けば赤い景色が見えるでしょう。

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光のドップラー効果(光源が遠のくと「赤方偏移」が起こり、光源が近づくと「青方偏移」が起こる)/ Credit: commons.wikimedia