たとえば軽業や力技に見られる優れた身体能力、珍獣や奇草木が持つ希少性、あるいは繊細な工芸の美といったものです。
女相撲が人気を博した背景にも、こうした「見世物」としての魅力があったに違いありません。
相撲自体が持つ魅力は、力と力のぶつかり合い、技の応酬にあります。
観客は、その真剣勝負に人間離れしたパフォーマンスを見い出し、そこに酔いしれる。
相撲のルールが単純明快である点もまた、万人に楽しみやすい要素でございました。
女力士たちは稽古を積み、褒美を目指して真剣勝負を繰り広げたといいます。
それはまさに、男性相撲に匹敵する「ショースポーツ」としての側面を持っていたのです。
しかしながら、こうした「珍しさ」にエログロ的な色彩が加わったことも事実。
例えば、江戸時代の裸体に対する意識は現代ほど厳しくなく、女性がふんどし一枚で取っ組み合う姿が興行として成立していたのも、当時の文化的背景ゆえといえます。
さらには、盲人力士との取組という形式が追加され、これがまた猥雑な趣を加えました。
「相手を探る」盲人力士の動きは、エロい演出として観客を刺激する一要素になったのです。
また女力士や盲人力士の四股名に目を向けてみれば、それぞれの個性がにじみ出るものもあれば、滑稽味や差別的なニュアンスを帯びたものも見られます。
特に後年になると「乳ヶ張」や「穴ケ淵」といった四股名が登場し、興行の方向性が一層エログロ的になったことがうかがえます。
ところが、この女相撲にはもう一つの側面がありました。
すなわち、ジェンダーの表象という要素でございます。
相撲といえば男のものという概念を、女性がまわしを締めて土俵に上がることで覆す。
その異性のジェンダーを身に帯びる光景は、観る者に奇妙さや目新しさを感じさせ、非日常の空間を生み出しました。
実際、当時の記録には、力士として男装した女力士たちが「濡髪長五郎」のような男らしい役柄を演じたことが描かれております。