ツーレーナ氏は「各大陸の司教会議が新しい教皇を選ぶためにローマへ代表を派遣するべきだ。それがシノドス的な方法だ。枢機卿を任命した教皇や枢機卿には敬意を払うが、それはもはやシノドス的な教会には適合しない古い仕組みだ。教会のシノドス化が真剣に受け止められるなら、これまで通りを続けることはできない」と強調する。具体的には、コンクラーベで枢機卿が次期教皇を選出するのではなく、各国の司教会議の代表たちが話し合って決めるというのだ。
ツーレーナ氏によれば、フランシスコ教皇自身が「教皇職も将来的にはシノドス的に行使されるべきだ」と述べている。それは第1バチカン公会議(1869~1870)で描かれた絶対主義的で君主制的な教皇像と決別を意味するわけだ。換言すれば、教皇の中央集権制から非中央集権化だ。ローマ教皇がバチカンで枢機卿たちだけが集まり、世界に約14億人の信者たちの牧会の諸問題を協議する代わりに、教会で牧会を担当する現場の司教たちが集まって解決策を模索していくというわけだ。
問題は出てくる。グロバリゼーションの時代、ソーシャルネットワークが発展してきている現代社会、聖職者もそれらの影響を受ける。世論調査が行われ、フェイクニュースが溢れている情報社会で生きている聖職者もやはり人間だ。意見は多様化し、牧会一つ上げても多様なやり方が考えられる。国、地域でその文化、慣習は異なる。そのよう時代環境圏で果たして各国の司教会議が統一された 教会を維持できるだろうか。ボトルアップで統一した教会体制がキープできるだろうか。
例を挙げる。ドイツのカトリック教会で聖職者の未成年者への性的虐待事件が多発し、その対応で教会指導部が混乱している現状に対し、信者からだけではなく、教会指導部内からも刷新を求める声が高まってきた。
そこでドイツ司教会議は2022年6月、教会の権力分立、指導部と平信徒の関係改善を核とした内容の改革案をバチカンに提出した。具体的な改革としては、①司教の任命について信者に発言権を与える、②同性カップルのための祝福を正当化する、③女性聖職者の任命、等が含まれる。