政治家というのは言葉遊びが大好きで断定せず、煙に巻くような表現をよく使います。私はカナダというゴリゴリの契約社会で長く育っているので言葉があいまいになることを避け、政治家に限らず誰が読んでも一目瞭然、明白な記述であることを前提とする社会にいます。ところが日本の場合、特に自民党の傾向としてどうとでも取れるような文言をわざと多用し、その解釈についてあぁでもない、こうでもないというフレキシビリティを持たせることは大いにあります。

玉木雄一郎氏 国民民主党HPより

今回の103万円の壁について自民公明国民が「178万円を目指す」と発表した時、私は非常に強い違和感を持ったのです。まさか自民が178万円をすんなり飲むはずがない、と。国民民主は178万円一択しかないので極端な話、177万円でも満足しないのです。(満足と三党合意とはこれまた違います。)自民としてはキャスティングボートを取られた以上、ここは国民民主に良い思いをさせ、むしろ立憲苛めをしたほうがよいだろう、と考えた節はあります。ここで想定外の爆笑だったのが日本維新の前原共同代表の手のひら返しの補正予算案妥協であります。前原氏が共同代表になると聞いた時、また面白ことが起きるぞ、と楽しみにしていたのですが、早速やってくれました。

結局、この2つの政治喜劇を見ているとなんだかんだ言っても自民党の方にすり寄っていく野党が見えるのです。そして立憲民主、野田代表が冴えないのです。思うに正攻法で真面目過ぎるのでしょう。玉木さんのようなやんちゃができない(もっとも彼はやんちゃをやりすぎて3か月間のお目玉を食らったわけですが)し、前原さんのような宇宙人でもないのです。で、「お前の178万円解釈はどうなのだ」と聞かれれば「そんなのゆっくり何年かかけて段階を経る時間稼ぎをしたいのは目に見えている、と考えます。自民党なんて1年後の戦略より目の前の与野党議論をまとめることが最優先なのです。