やがて子供たちは物語の「細部」にも気付きはじめ、キャラクターやナレーションのセリフまで覚え、言葉や口調を真似たりするようにもなります。

理解が深まるにつれて末端の情報にまで気付きがおよび、物語の情報を抽出して自分のものとして使えるまで、脳の発展が進んだのです。

ヒーロになりきってごっこ遊びができるようになるには繰り返し学習が必須です
ヒーロになりきってごっこ遊びができるようになるには繰り返し学習が必須です / Credit:Canva . 川勝康弘

物語のキャラクターの言動を真似るというのは、大人がやると痛々しいものです。

しかし子供にとって真似る訓練は脳の発達において非常に重要です。

まずもって繰り返しの視聴により物語の趣旨やパターンを理解し、次いで台詞を覚え、感情をトレースし、声の調子をあわせ、さらに真似を行うべき場面(ごっこ遊び中)をみつけるといった複雑な手順が全てクリアされていなければなりません。

未発達な脳にとってこれを実行できるようにすることは、非常に大きな進歩と言えるでしょう。

もし身近な子供がヒーローごっこを初めて行い、ヒーローの真似がそれなりに行えていたのなら、是非とも褒めてあげてください。

その子供は自分の脳内に存在しなかったパターンや情報を物語から抽出し、自分の血肉とすることに成功したと言えるからです。

そして繰り返しだけが、この偉大な進歩を起こせます。

先に人間の認知能力には限界があると述べましたが、繰り返しを行うことで子供たちは既に掴んだ基本的な情報やパターンを無視して、気付かなかった情報やストーリーの背景の理解に認知力を注げるようになります。

次々に新しい物語に接することは脳に強い刺激となるのは間違いありません。

しかし繰り返しが行わなければ、子供たちは理解の深化を行う機会を逃してしまうでしょう。

幼い子供たちにとっては、単に触れる情報の量が多くなるよりも、往々にして脳内にある情報の深堀のほうが利益があるからです。

大人の世界でも「一芸に通じるものは多芸に通じる」ということわざがあります。