しかし、このような「前方を正確に見る能力」に特化したフクロウの眼球は「筒状」になっており、頭骨に固定されているため、「球状」の眼球をもつ人間のように自由に動かせません。

実際、フクロウの両眼視野は約70°しかありません。

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フクロウの眼球の構造/Credit:Graham R. Martin,Frontiers in Neuroscience(2017)

つまり眼球が動かない替わりに、その視野の狭さを補うため首が270°も回るようになっているのです。

フクロウは首をぐりんと回すことで、広範囲を遠くまで見通すことができるのです。

またフクロウは左右非対称の耳を使って獲物の位置を把握しています。

実はフクロウは片方の耳がもう片方の耳よりも少し上についており、「音の強さ」「音が届く時間」などの左右差から、音源の位置を正確に知ることができます。

これに加えて、フクロウたちは首を傾けて左右差を作りだし、より正確な音源の位置を知るための調整を行っています。

このようにフクロウは、獲物を狩るために首の可動域が広くなければいけません。

とはいえ、そこまで大きく首を曲げることで、健康上の問題は生じないのでしょうか。

例えば、首の血管がねじれたり詰まったりすることはないのでしょうか。

フクロウが首を傾けたり回転したりしても血管が損傷しない理由

フクロウは、首の可動域が広いだけでなく、ぐりんと素早くねじることができます。

当然、人間では可動域が限られていますが、仮に同じように素早く頭を動かし続けるなら、動脈の内壁が裂けて血栓ができ、脳卒中を引き起こす可能性があります。

場合によっては首の骨が折れることもあるでしょう。

また、そもそも血管がねじれて血流が妨げられる可能性もあります。

しかし「大量のフクロウたちが脳卒中などで森の中に横たわっている」なんてことはありません。

どうしてフクロウでは問題が生じないのでしょうか。