清水(1953)までは、この「集団的結束力」を支える血縁の小集団においては、「感情融合」を軸とした「家族精神」が強調された。それは、「歴史や財産とともに、言葉、知識、経験、感情、傳統、家風、家憲、家法、名誉等」(同右:108)などが包括される概念であったが、日本史上空前の高度成長期に発生した大量の社会移動(地域移動と階層移動)がこれを壊した。

核家族時代の定義

その時代からは大家族制に代わって核家族化が進んだために、1966年には「家族は夫婦関係を基礎として、親子・きょうだいなど近親者を主要な構成員とする、感情融合に支えられた、第一次的な福祉追求の集団である」(森岡、2005:302)など機能的な定義が生まれた。

この中の「福祉追求」とは、「(1)保健欲求(病→健)、(2)経済的安定欲求(貧→富)、(3)情緒的反応欲求(争→和)の充足された状態(不安→平安、苦→楽)の追求である」(同上:242)。

健康、経済的安定、和合、快楽を追求する血縁小集団という機能的理解は、小家族化の今日でも有効である注7)。

家族機能

従来から私は、家族の構造面だけを取り上げて、家族を「血縁関係によって結ばれた小集団」と定義してきた。なぜなら、「感情融合」でも「福祉追求」でも「幸福追求」でも、これらは家族構造が織りなす機能面に属すると見ていたからである。

しかし、少子化と小家族化による構造と機能の分化は、家族機能の補完としての公共的支援を前提とせざるを得なくなり、21世の今日ではそれが通常のスタイルになってしまった。

そのため、家族に固有とされてきた機能は、性と生殖、生産消費、老幼病弱の保護、子どもの社会化、娯楽、宗教、社会的権利と義務(金子、1995)などもまた、家族単独での充足が不可能になった。

ただ、これらを満たさないと、家族内の次世代移行がうまくいかなくなり、個別家族のサステナビリティが阻害される。その積み重ねが社会システム全体のサステナビリティにも負の影響を及ぼすことになり、その結果として国民の生活様式全般が大きく変わったのである。

生活様式の変化