一方、その後の150年の間に数学者たちは、さまざまな無限の種類を発見してきました。
その結果、現在では弱い無限から強い無限へとさまざまな無限が階層状に存在していると考えられています。
このレベルまで達すると単なる「大きさ」という単純な概念だけでなく、モデル論的・証明論的な側面など多様な要素を基準としたヒエラルキーが構成されることになります。
こうした無限の階層性や構造性はHOD(Hereditarily Ordinal Definable sets:遺伝的に順序数で定義可能な集合)予想と呼ばれており、現代数学において重要な基礎となっています。
そしてこの考えを採用することで、数学者たちは、新たな無限の種類が発見されるたびに、それを既存の無限の階層構造のどこに位置づけるべきかを検討してきました。
しかし今回のウィーン工科大学の研究により、無限の世界に革命が起こりました。
「新しい無限」は既存の数学の常識を覆す
現在、無限の大きさを階層的に整理する際、大きく3つの領域に分けられています。
1番下(第1領域)には、通常の集合論の公理に従う無限数が含まれます。
ここには、カントールが扱った自然数や実数といった「基本的な無限」が存在します。
1番上(第3領域)には、選択公理をはじめとする標準的な集合論の公理さえも崩壊させてしまうほど巨大な無限数が存在します。
研究者たちは、この領域を「カオス」と呼んでいます。
一方で、ほとんどの無限数は、この2つの間に位置する「第2領域」に収まります。
そこでウィーン工科大学の研究者たちは、「エグザクティング・カーディナル(exacting cardinals)」と「ウルトラエグザクティング・カーディナル(ultraexacting cardinals)」という新しい無限を階層の中に当てはめようと試みました。
すると驚くべきことに、それが不可能であることが判明します。