もちろん途上国はこのような金額で満足するわけがない。最初、この目標が内々に提示された際、途上国側は「冗談か?」と鼻で笑ったと言われている。

「公的資金のみならず民間資金も含めるべき」との先進国の主張に対し、途上国は「企業が決定する民間資金では予見可能性がない。民間投資が欲しければ途上国の投資環境を改善すべきという責任転嫁的な議論になる」との理由で公的資金にこだわった。また、ドナー範囲を広げることについても「先進国の責任逃れだ」と強く反対した。

パリ協定第9条1項では「先進国締約国は、緩和と適応の両方に関し、途上国締約国を支援するため、条約の下での既存の義務を継続する資金源を提供する(shall provide)」、第2項では「他の締約国は、自発的にそのような支援を提供し、または継続することが奨励される(encouraged to provide or continue to provide)」、第3項では「世界的な努力の一環として、先進国締約国は、多様な資金源、手段、チャネルから気候変動資金を動員(mobilize)するため、引き続き主導的な役割を果たすべきであり、公的資金の役割は大きいと指摘し、途上国締約国のニーズと優先事項を考慮し、国主導の戦略を支援するなど、多様な行動をとる。このような気候変動資金の動員は、これまでの努力を上回るものでなければならない」と規定され、先進国とその他締約国の間で資金援助への関わり方が明確に書き分けられている。

このようにNCQGをめぐって先進国と途上国の意見は真っ向から対立し、会合終盤に至っても収斂の気配を見せなかった。

緩和アジェンダを前に進めたい先進国

他方、「資金COP」において途上国から攻められる立場の先進国は、全体パッケージの中で自分たちが重視する緩和で何かを取りたいと画策した。近年のCOPは緩和を重視する先進国と資金を重視する途上国の要求をバランスさせることで合意を形成してきたからである。