その意思とは、横浜FMから特別指定選手に選ばれたとしても「教育実習を優先する」というものだ。本人はサッカー一色だった青春時代を振り返り「勉強もしっかりとしたくて筑波大に来た」と語っているのだ。


吉田麻也 写真:Getty Images

元Jリーガーのセカンドキャリアの実情

毎年、新入団選手がプロの道を歩み出すと同時に、志半ばにして「契約満了」と称した戦力外通告を受け、泣く泣くスパイクを脱ぐ選手がいる。その数はおよそ50~60人といわれ、JFLや地域リーグも加えれば100人を超える。

日本におけるプロサッカー選手の平均寿命は25~26歳と言われ、単純計算で、高卒で約7年、大卒で約3年で芽が出なければクビになる厳しい世界だ。

元日本代表DF吉田麻也(ロサンゼルス・ギャラクシー)が会長を務め、引退後のキャリア支援も行う日本プロサッカー選手会(JPFA)の調べによると、引退した元選手の中で6割程度がJクラブのコーチやスタッフ、Jクラブ以外のサッカー関連の仕事に就いている一方、3分の1ほどが一般企業に就職。そのほとんどが“体力勝負”の営業職だという。そしてわずかではあるが、少ない可能性に賭け、アルバイトをしながらオファーを待っている者もいるのが実情だ。

J1やJ2ならサッカーだけで食べていけるが、J3以下のカテゴリーとなると、現役のプロサッカー選手でありながら、アルバイトなどの副業をしながらプレーを続ける選手もいる。

もちろん、プロになるまでの選手だ。それまでの人生をサッカー一本で過ごしてきたことは想像に難くない。そんな人間が20代半ばで、右も左も分からない社会に放り出されるのだ。「怖くない」と言う者の方が少ないだろう。運よくサッカーコーチの仕事にあり付けたとしても、その給料は微々たるもので、単年での業務委託契約だ。いつクビを切られるかも分からない恐怖は、現役時代と変わらない。