「右翼雑誌の舞台裏」(梶原麻衣子)

この↑新書のオビのデザインを見たら分かる人はわかると思いますが、「安倍時代」を象徴する雑誌として、「WILL」と「Hanada」っていう右翼雑誌があったんですね。

まさにこういうデザインで今でも出ています。

梶原さんは、親が自衛官で、学校の先生に「あなたのお父さんの仕事は世間で嫌われているので、外では”父は公務員です”と言いなさい」と言われたみたいな事が色々あって反感を募らせて右翼雑誌の世界に飛び込み、「左翼との戦い」に邁進してた人なんですけど(笑)

それが、梶原さんが若いころは「左派エスタブリッシュメントがちゃんとある」状況で「右翼がカウンターとしてゲリラを戦う」状態だったんで良かったけど、そのうち左翼の方も、さらには右翼界のエスタブリッシュメント雑誌すらも廃刊になったりしてグッダグダになってきちゃって、気づいたら右翼雑誌でナンバーワンの存在に”自分たちが”なってしまったのが「これでいいのか?」と思い悩み始めるんですね。

で、色々と「ただ当時の左派論調にカウンターしたいだけ」だったのに、右翼雑誌は右翼雑誌でかなりメチャクチャなことを言ってるように感じ始めて、板挟みになってこのままでは続けられない…と退職し、今はフリーになってかなり中立的でバランスの取れたライターさんになってるんですが。

自分の直感と魂のままに突き進んで一番右まで振り切れて、今度はまた自分なりの良心に導かれて逆に振り切れて独立してるんで、なかなか堂に入った「中道主義とはなんぞや」について身を持って探求し続けている人になっています(笑)

そうやって、「右翼少女(本書の中にあった表現)」が「中年の右派寄り中道派フリーライター兼編集者」になるプロセスの中で、僕の言説に注目してくれて、色々と活動してくれて本を出すところまでこぎつけてくれたという経緯があったわけです。

2. 「あまりに教条的な左派vs安倍」という構造がもうない

梶原さんの本を読んでいて、当時の「論壇」の状況を多面的に色々なエピソードで振り返ってみると、「もう安倍時代は戻ってこないな」と思うのは、当時は今よりもまず左派の方が物凄い教条的な状況があったというのがあります。