人口変容に関する論戦が低調
このような人口動態が年に数回公表され、しかも岸田前内閣の閣議でも『こども未来戦略』(『戦略』と略称)が出され、それに呼応して民間の「人口戦略会議」による『人口ビジョン2100 ー 安定的で、成長力のある「8000万人国家」へ 』(『ビジョン2100』と略称)が発表されたにもかかわらず、国会で両者を素材にした10年後20年後を見据えた「少子化する高齢社会」や「人口減少社会」をめぐる論戦が本気でなされたようには思われない。
2100年でも76歳で生存する可能性が高い9月末までに誕生した約54万人の赤ちゃんの大半が、2100年には76歳として生存する可能性は大きいし、そういう時代になったかという昭和団塊世代の感慨には深いものがある。なぜなら、本年度中にすべての団塊世代が75歳を迎え、後期高齢者になるからである。そしてこの54万人の赤ちゃんの大半が76歳になった時、22世紀が始まる。
そのようなマクロで長期的な戦略を立てて、これからの時代を現世代が次世代次々世代に向けてどのような具体案を設計するか。それこそが国民の代表として国政を担う議員と称する人々の最大の課題であろう。
人口動態の地域格差への配慮『戦略』でも『ビジョン2100』でも、日本全体を包括的にとらえて、その人口動態への多くの政策案が記されている注2)。
それも重要だが、もう一つの方向として、大都市、中都市、小都市・過疎地域などの地域差を考慮した対応も考えておきたい。いわば、人口動態の地域格差への配慮もまた、これからの「人口戦略の異次元性」を構築する軸になるので、同じく1月から9月末までの人口動態統計を手掛かりに、その基礎資料を作成し提示しておきたい。
人口変容の政令指定都市格差周知のように日本の政令指定都市は20都市であり、これに比較対象として東京都区部を加えて、21都市の比較を試みた(東京都区部を一つの都市とする、以下同じ)。