それは霊長類の仲間であるサルにとっても同じことです。

サルの祖先は恐竜亡き後の約6500万年前から樹上での生活を始め、地上を闊歩する大型の捕食者から安全に暮らすことができました。

しかしその中にあって唯一、樹上のサルの祖先を狙うことができたのがヘビでした。

それ以来、長きにわたるヘビの恐怖は霊長類の祖先のうちにしっかりと植え付けられ、それが現在のサルやヒトにも受け継がれていると考えられています。

実際、これまでの研究でも、本物のヘビを見たことのないサルは他の動物の写真よりもヘビの写真をいち早く見つけることができ、生後6〜11カ月のヒトの赤ちゃんもヘビの写真を見せられると顕著な脳波を示すことがわかっているのです。

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ヘビのどこを見て「怖い」と感じるのか/ Credit: canva

つまり、サルとヒトは大人たちからヘビの怖さを教わったり、ヘビに噛まれた経験からヘビを脅威と認識するのではなく、遺伝的に「ヘビが怖い」と感じる本能を生まれつき持っているのです。

ところがその一方で、サルやヒトが具体的にヘビのどこを目印に脅威と感じているのかは不明でした。

ヘビに特有のぬるっとした姿形なのか、うねうねした動きなのか、はたまたヘビのウロコなのか。

過去のいくつかの研究は「ウロコを脅威の手がかりにしている」ことが示唆されていますが、確かな証拠はありません。

そこで研究チームは今回、飼育下にあるサルを対象に実験を行うことにしました。

イモリにヘビ皮を着せると「脅威」と認識された⁈

この研究では、本物のヘビを見たことがない3頭のサル「シバ・ウメ・ペロ」に協力してもらいました。

3頭には用意した9枚の動物写真から1枚だけ異なる写真を選ばせて、その検出にかかった時間を測定します。

まず第一の実験では、8枚のイモリの写真の中に混ぜた1枚のヘビを選ぶ条件と、8枚のヘビの写真に混ぜた1枚のイモリの写真を選ぶ条件を実施し、ヘビとイモリのどちらを先に見つけ出せるかを調べています。

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実験に使用したヘビとイモリの写真/ Credit: Nobuyuki Kawai., Scientific Reports(2024)