そしてこれらのデータを比較分析した結果、上司が常に高圧的で横暴なタイプであると、これまでの研究どおり、従業員の心理的ストレスが高く、生産性も落ちやすくなることが示されました。
ところがそれ以上に、上司が高圧的で横暴な一面と誠実で優しい一面を行き来する「ジキルとハイド型」であったとき、上司が常に高圧的で横暴な場合と比べて、従業員はより強い心理的ストレスと疲労感を感じており、仕事のパフォーマンスや生産性も大きく落ちていたのです。
では、どうしてジキルとハイド型の上司の方が、常に横暴で攻撃的な上司よりも従業員を疲弊させやすいのでしょうか?
その理由について、研究主任のシュー・ハオイン(Xu Haoying)氏は、ジキルとハイド型の上司に対する「予測の難しさ」にあると指摘します。
例えば、常に横暴な上司の場合は、どういうときに怒鳴ったり、理不尽になるのかのパターンが読みやすいので、従業員の方も「さあ、そろそろ雷が落ちるぞ、くるぞくるぞ… ホラ、来た!」というように、ある程度の予測ができるのです。
それでも心理的なダメージはありますが、まだ事前に予測できる分、心の準備ができているのでしょう。
これと対照的に、ジキルとハイド型の上司は、二面性をコロコロと行き来するので、いつ鬼モードに入って、いつ仏モードに入るのか、従業員の方も予測しづらくなります。
「従業員は、良い上司と悪い上司、どちらの上司が現れるかを常に推測してしまうことになるので、精神的に疲弊し、やる気を失い、能力を十分に発揮できなくなるのです」とハオイン氏は説明しました。
このように、上司の態度がいい行動と悪い行動の間で予測できないほど揺れ動くと、従業員のやる気とパフォーマンスが急激に低下し、ひいては会社全体の損失にもつながりかねません。