劇中では、人格も学識もともに優れている紳士のジキル博士が、自ら発見した薬を飲むことで、残忍で醜悪な小男ハイド氏に変身するという物語。
この小説は一人の人間のうちに潜む善と悪の二面性をテーマにしており、世間的には解離性同一性障害(※)の代名詞として「ジキルとハイド」の例えがよく使われています。
(※ 解離性同一性障害:自分の中にまったく別の人格を持つ精神疾患の一つで、本人にとって耐えられない状況を他人の出来事のように切り離したりします。かつては多重人格障害とも呼ばれていました)
今回の研究で言及されている善と悪を行き来する上司とは、解離性同一性障害を指すわけではありません。
上司自身が「部下に厳しくしすぎたから今日は甘めに行こう」というように意識的に2つの面を行ったり来たりする場合、あるいは本人には自覚がないものの、厳しい一面と甘い一面を無意識に行ったり来たりしてしまう場合をメインとしています。
しかし、ジキルとハイド型の上司が従業員にどんな影響を与えるかは明らかにされていません。
そこでチームは会社の上司が二面性を行き来する上司だと、従業員はどうなるのかを調べてみました。
上司が「ジキルとハイド型」だと、従業員の生産性が「ガタ落ち」する
本調査では、アメリカとヨーロッパに拠点を置く企業のフルタイムワーカー(正社員)650名以上を対象としました。
オンラインでの質問調査が実施され、参加者それぞれに自らの上司のリーダーシップを評価してもらいます。
例えば、部下を怒鳴ったり、侮辱したり、公然と批判する行動をどれだけ取るか、反対に部下に誠実に接し、公平な決定を下して業務を進めているかなどに回答してもらいました。
それから参加者自身の会社勤めにおける心理的ストレスや疲労感、それから仕事のパフォーマンスや生産性に関する質問にも答えてもらっています。