タックスヘイブンに移住すればタックスヘイブンの税制の恩恵を受けることができると述べましたが、ケイマン諸島や英領バージン諸島への移住は現実的とはいえません。

一方、金融ハブ型タックスヘイブンの香港、シンガポールへの移住をしている日本人は少なくありませんが、香港・シンガポールは狭く、物価も高いので嫌いだという方もいらっしゃるでしょう。

人ではないけれども法律上は「人」と同じように扱われるのが「法人」

そこで「法人」の出番です。法人というのは、本来は「人」ではないけれども、法律上は「人」として扱う存在です。株式会社がその代表です。

たとえば、筆者がトヨタ自動車株式会社の株主であるとして、法律上、筆者とトヨタ自動車株式会社は別の人格です。トヨタ自動車株式会社が仮に損害賠償支払義務を負っているとしても、筆者が損害賠償支払義務を負うわけではありません。

「それは超少数株主だからだ」といわれそうですが、創業家出身で社長の豊田氏であっても、トヨタ自動車株式会社とは法律上は別の人格です。さらにいうと、筆者が株式の100%を持つ会社「コミネ株式会社」を作ったとしても、私と「コミネ株式会社」は、法律上、別の人格となります。

つまり、私は日本に居住していても、「コミネ株式会社」は別の国・地域に存在して、その国・地域の法律が適用されるということも起こります。

タックスヘイブンにペーパーカンパニーを作ればよい?

ふつう、会社というと、オフィス・工場・店舗などがあって、多くの従業員が働いている組織を思い浮かべますが、そういう会社ばかりではありません。タックスヘイブンには、「ペーパーカンパニー」と呼ばれる、法人設立の書類だけで、オフィスや人員などが存在しない会社もかなり一般的です。

では、日本の居住者が、タックスヘイブンに実体のないペーパーカンパニーを作って、そのペーパーカンパニーの名義でビジネスをしていけば、日本での課税対象からは外れるのでしょうか?