回復するとしたらそれはどんな手段を使えばいいのか?
謎を解明すべく研究者たちはまず、マウスたちに恐怖記憶の刷り込みを行いました。
マウスたちはまず3分ごとに2秒間の強烈な電気刺激を与える部屋(恐怖条件付けチャンバー)に入れられ、恐怖を記憶させられました。
同じ部屋に再びマウスを入れると、マウスたちは恐怖によって凍り付くフリーズと呼ばれる現象を引き起こします。
人間が恐怖によって動けなくなるように、マウスも恐怖を連想させる部屋をみせられると記憶を呼び起こされ、動けなくなってしまうのです。
次に研究者たちはマウスを2グループにわけ、一方のグループの頭部に対して高頻度頭部衝撃(HFHI)を与えました。
高頻度頭部衝撃(HFHI)は1回1回の打撃は強くありませんが、何度も打撃を繰り返すことで、脳に重大な影響を及ぼします。
(※実験では6日間に渡り合計30回の頭部打撃が行われました)
すると通常のマウスたちは恐怖記憶を呼び起こす部屋(恐怖ハウス)をみせられるとフリーズ反応をみせるものの、頭部打撃を受けたマウスたちは反応が全くなかったり著しく弱いことが示されました。
この結果は頭部打撃を受けたマウスには記憶喪失が起きていることを示しています。
次に研究者たちは、マウスの記憶喪失を回復させられるかを実験しました。
失われた記憶は脳回路の活性化によって復活する
今回の実験に使われたマウスたちはどれも事前に脳の遺伝子を操作されており、光をあてられるとその部位の脳活動が活発化するようになっていました。
研究者たちはマウスの頭蓋骨にドリルで穴をあけ、マウスの記憶が蓄えられている「記憶エングラム」に対して光(レーザー)を照射しました。